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これもひとえに昔からプチ不幸に慣れているせいだろうかと思うと苦笑がもれるが、それでも今、数々の不運によって鍛え上げられた何度踏まれてもしぶとくへこたれない精神力や、ちょっとやそっとのことではビクともしない根性をこれでもかと発揮できているんだと思えば、それも悪くないかもしれないという気がしてくるから不思議だ。
いや、やっぱ違うか。
――とにかく。
「よ、よーし。開けますよー……。せ、せーのっ」
クローゼットまで這っていった三佳は、つかまり立ちで体を起こし立膝をつくと、勢いをつけて扉を開けた。続けて中の隅々まで懐中電灯で照らしながら、万一にも残っているものはないか、薄ぼんやりとしか明かりが取れない中に注意深く目を凝らす。
こういうのは、だいたいの場合において相場が決まっていると思う。
霊は生前、思い入れの強かったものや場所に憑いたり、近くにいたりする。そしてこんなふうに生きている人間に恐怖を与えるのは、恨みや憎悪や愛憎や……負の感情に起因するところが多いと思う。
完全に素人考えでしかないが、三佳も同じ立場だったら、どうにかして本懐を遂げたいと思うかもしれない。晴らしたいと思うかもしれない。
たとえどんなものになっても――とは、さすがに言い切れないけれど。でも、見つけてほしい、思っていることや感じていることを知ってほしいとは、たぶん思うと思う。
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