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「うぎゃあぁぁぁ――!!」
しかし、そんな三佳の同情心はあえなく粉砕される。
『ふふ、ふふふふふ……。見つかっちゃったぁ』
残っている物もなく、ただガランとしたクローゼットの壁から出てきたのは、目が落ち窪んだ真っ白な顔の女の霊。メデューサのごとくウネウネした髪が頬に張り付いていて、見るも恐ろしい姿だった。
さらに恐ろしいことに、頭部しかないのである。
再び腰を抜かす三佳をよそに、狭いクローゼットの中をあっちへフラフラ、こっちへフラフラと頭だけで漂う様は、下手なホラー映画よりホラーだ。
……でも、なんとなく。なんとなくではあるが、嬉しそうに見えなくもなかった。
〝見つかっちゃった〟ということらしいけれど、その実、どういうわけか、まんざらでもなさそうな感じに見えるのだから、こちらとしてもリアクションに困る。
「か、かくれんぼ……?」
『ふふふ、そうね。もういいかい? って探してくれる人はいないけど』
「ぎゃーっ!! 会話できちゃってる!!」
つい思ったことが口について出れば、普通に会話ができてしまい、その点で三佳はまた叫び声を上げた。今までこんなことはなかっただけに、やはり早坂が言うところの〝びっくりするくらい憑かれやすい体質〟と関係あるのだろうかと、否が応にも思わされる。
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