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ただ三佳は、霊やあやかしや自分の体質を、まだ心から信じたわけではなかった。
早坂のオオカミ姿は見たし、あれだけの睡魔も早坂が祓ってくれたとたんに嘘のようになくなった。今だってバッチリ霊が見えているし会話も成り立っている。でも、往生際が悪いと言われようと、夢であってほしいという願いも十分に持ち合わせているのだ。
……いや、願っている時点で九割九分、信じているようなものだ。それでも、こんなところにほとんど丸腰状態で閉じ込められた挙げ句、霊が出てきて会話もできるという、この奇妙奇天烈な状況を鑑みるに、やはり夢であってほしいと切に願わざるを得ない。
『ねえ、ついでだし、もう一つ見つけてもらいたいものがあるんだけど、いい?』
「……つ、ついでの意味を知るのが怖いんですけどっ!」
が、やはり霊には三佳の切なる願いなど関係なかった。
しまった、返事しちゃったよ! と大慌てで手で口を押えるものの、時すでに遅く、霊はまた嬉しそうに狭いクローゼットの中をフラフラ漂いはじめてしまう。
――ていうか、まさか体とかじゃないよね!?
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