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その考えに至った三佳は、霊が出てきた際に尻もちをついたままになっていた両足が今さらながらガクガク震えはじめた。
もし霊の探してほしいものが三佳の想像どおりなら、きっと自分の遺体だ。骨だ。それは断固拒否したい。ぜひとも拒否させて頂きたい。
だって、こちとらハウスクリーニングが仕事であって、遺体探しなんてまったくの専門外。フィールドがまるっきり違うのだ、頼まれたところで無理なものは無理である。
それに、この世には警察という正義の味方がいる。
仮にこの霊が失踪者だったとして。捜索願も出されているとする。だったら、場所や時期や名前や年齢などの詳しい情報を教えてくれれば、早坂に話をして警察に動いてもらうことができるのではないだろうか。いいや、きっと動く。絶対に動く。
だからそれまで、あともうちょっとだけ辛抱してほしい。もう少しだけ発見を待ってくれたら、警察が必ず見つけてくれる。身元を明らかにしてくれる。そうすれば、三佳もその状態で霊の安らかな冥福を心から祈ることができる――。
『やぁねえ、そんな大げさなものじゃないわよ』
すると霊は、そう言っておかしそうにフワフワ揺れた。
「じゃ、じゃあ、何を探して……?」
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