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『写真よ。って言っても、ある場所はわかっているの。ただ私、こんな体でしょ? いや、体っていうか、普通の人には見えない存在って言ったらいいかしら。とにかく、私じゃ写真を手に取ることもできないし、物を避けて探すこともできない。そこに満を持して視えるし話もできるあなたが来てくれたじゃない? 嬉しくてつい、中に押し込めちゃったのよね。ふふ、でも、あなたが来るまでが、もう本当に大変で大変で……』
「た、大変……?」
聞くと霊は、まるで水を得た魚のように嬉々として語りはじめた。
『そう。もともと私、この部屋に住んでたんだけど。酔っ払ってたのよ、転んだ拍子にうっかりバスタブに頭を打ち付けちゃってね。打ち所が悪くて、そのまま死んじゃったの。シャワー浴びてたときだったから、お湯も出っぱなし。だけどこれが、下の部屋の人が夜勤で外出してたの。いつもどおり仕事に行ってただけだったのに、帰ってきたら部屋が水浸しになってて、でも上の部屋の人――つまり私は一晩の間に冷たくなっちゃってたものだから、何をしても、うんともすんとも言わない。もうね、あのときばかりは申し訳ないわ、でも裸を見られるのが恥ずかしいわで、どうしたらいいかわからなかったわよ』
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