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「そ、それはまた……」
なんとも不幸な話だ。このとおり、本人は明るく語っているが、死んでも死にきれなかっただろう。
それに、誰だって裸を見られるのは愛する人の前だけがいい。仕方がなかったこととはいえ、その言葉で片づけるには、あまりに不憫な最期である。
『ここまで言えばもうわかるわね? そのあとはアパートを管理してる不動産屋が出てきたり、警察がやって来たりして、もうてんやわんやの大騒ぎよ……』
すると霊は、言葉を失う三佳の前で悲しげに揺れると、疲れたように頭を振った。
『結局、二部屋ともダメになっちゃったから、不動産屋は床の張り替えやら天井の修理やらで、事後処理に追われたわ。何より痛手だったのは、自分たちが管理する部屋で人が死んだことで生じる損害の大きさよね……。警察も私の死因は不運な事故死としてくれたけど、部屋を貸せる状態に戻すには時間もお金もかかるし、借りたい人が現れた場合、不動産屋はそのことを開示しなきゃならない。……これじゃあ誰も住みたがらないに決まってるわ。下の部屋の人もすぐに引っ越しちゃったし、ほかの部屋に住んでいた人も、そのうちみんなどこかに行っちゃったわ。――残ったのは私だけよ』
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