■0.これが事のはじまりなわけで

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「……じゃあ、それ以来、ここに一人で……?」 『そうね。もう丸二年になるかしら。私が死んだのは三年前なんだけど、その後一年の間に部屋の住人はみんな引っ越して行っちゃったから。それでもちょこちょこ住む人はいたの。だけど二年って案外短いのね。その間に誰も寄り着かない物件になっちゃって、不動産屋はますます採算が取れなくなって、私はここから離れられなくなって……』 「……そう、だったんですか……」  なんて悲しい出来事なのだろうか。  ということはつまり、この霊は二年の間に地縛霊化しつつある、ということなのかもしれない。三佳が今まで遭遇してきた数々の不運やプチ不幸なんて可愛いもの、まるで不運でも不幸でもなかったと思えるほどだ。  ……いや、そもそも比べるものでもないだろう。だって三佳は生きている。 『ふふ、そんなに悲しそうな顔をしないでよ。私まで泣けてきちゃうわ。でもね、わかってるのよ。私がこの部屋に憑いているばっかりに良くないことが起きるって。私がここに留まっているせいで余計なもの(・・)まで集まってきちゃっているのも、よくわかってる。だから早く逝かないとって、ずっと思ってるわ。それでも、あの写真がないと私、私……』
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