80人が本棚に入れています
本棚に追加
驚いた声を上げる霊に、三佳は一つ大きく頷くと笑って答える。
本当は恐怖心がまだまだ勝っている。おそらく霊は目を見開いたのだろうけれど、もともと落ち窪んでいるので表情で感情は読み取れないし、このとおり気さくな人柄ではあるものの、何より頭だけというのが、どうにも背筋がゾワゾワして落ち着かない。
けれど、言ったことは本心だ。
ただ物件を綺麗にするだけがハウスクリーニングの仕事というわけでもないだろう。夜に赴く物件での掃除はおそらく、そういった〝思い〟も掃除するのが仕事だ。
もちろん怖い思いはする。危険な目にも遭う。でも、視えるし話せる三佳は重宝してもらえる。早坂にもそうだけれど、彼女のように事情を抱えた霊にも。
『ありがとう。本当に、ありがとう……』
「いえ。これが私の仕事ですから。それより例の写真ですよ。どこにあるんです? 探しますから教えてください。必ず見つけますから」
絞り出すように礼を言った彼女に、三佳はもう一度大きく頷くと、笑った。
最初のコメントを投稿しよう!