■0.これが事のはじまりなわけで

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 写真は、ユウリと思われる若い女性と、四十代中頃かという男性とのツーショットだった。  レストランというよりは高級クラブといった華やかな背景に、座っているのも、いかにも高そうな革張りのソファー。ユウリが着ているドレスや髪型にメイクもクラブで働く女性を思わせるようなそれなので、ほぼほぼ間違いないだろう。  男性のほうも紳士的な佇まいで、でも遊び慣れてもいるのだろう、ユウリの腰に手を回し、引き寄せるような格好で写っている。けれどいやらしさは不思議と感じない。むしろスマートで、そこが〝そういう場所〟での遊び方をよく知っている人なんだと思わせる説得力があった。  そんな男性に腰から引き寄せられて恥ずかしそうに、けれどとっても嬉しそうな笑顔を向けているユウリは、同性の三佳から見ても本当に綺麗だった。そして、きっとユウリはこの人のことが好きだったんだろうということも、容易に想像できる。  照明の関係もあるだろうけれど、お酒のせいだけではなく目が潤んでいるのだ。好きな人を前にすると黒目がちょっと大きくなると言うし、何より同性だからこそ、わかる。
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