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『んもう。やめてよ三佳。そういうのを邪推って言うって知らないの?』
するとユウリは、三佳の目の前にフワフワ漂うと茶目っ気たっぷりに言う。
『彼はウチのクラブに遊びに来てくださっていたお客様の一人にすぎないわ。結婚もしてるし、子供もいる。若いけれど、有名な会社の社長でもある。そんな人のスキャンダル記事が出てみなさいよ。仕事もプライベートも、ぐっちゃぐちゃの崩壊だわ』
それから諭すようにそう言い、「でも」と開きかけた三佳の口を閉口させた。
ということは、プライベートな付き合いは一切なかったということだろう。そしてそれは、そこまで好きな人だったという証拠でもあると言えると思う。
ユウリは、クラブに来てくれるお客様の一人にすぎないと言った。好きだったんじゃないかと聞けば邪推だとも言う。でも、そうでも言わなければ、そうでもしなければ、いつか間違った行動に走ってしまうかもしれないと自分を必死に律していたのかもしれない。それが彼を慕うユウリの想い方だったとすれば、三佳にはもう、何も言えない。
「……わかりました。じゃあ、この写真はどうしましょう?」
さっと涙を払うと、三佳は気を取り直して尋ねる。
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