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「未練が解消されたんです、消えてもらって当然でしょう」
まるで何を当たり前のことをという口調で、そう淡々と告げた。
「そんなっ。ユウリさんは無関係だったんですよ!? 自然に成仏するまで、私たちがどこかで保護しながら見守ってあげたってよかったじゃないですかっ」
それを聞いて、三佳はたまらず声を荒げる。
〝僕のもの〟だの〝新しい自分に目覚める〟だの、ちょっと意味がわからないなと思うやり取りは確かにあった。なんだか背筋も無性にぞわっとする。でも、消える間際の最後の言葉がそれなんて、あんまりじゃないだろうか。
消えてもらうしかないのなら、せめて生前から慕っていた彼への想いを言葉にさせてあげるくらいの紳士的気遣いがほしい。
「何をバカなことを」
すると早坂は、フンと鼻を鳴らした。
「二年もここに憑いていたんです、もうそろそろ限界だったんですよ」
「げ、限界……?」
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