■0.これが事のはじまりなわけで

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 *  後日談として――。 「ええぇっ!? ユウリさんが……おと、おと――男!?」  その日三佳は、早坂から事実を聞かされるなり素っ頓狂な声で叫んだ。アパートの〝掃除〟が完了し、一日の休養をもらって出社した矢先のことである。  早坂は、まるで天気の話をするかのように「そういえば。野々原さん、気づいていました?」とユウリが男性であったことを言ったのだけれど、当然、最初から最後まで女性だと思って接していた三佳にとっては、天地がひっくり返るほどの衝撃だった。 「だだ、だって、持っててほしいって言われた写真のユウリさんは女性ですよ!? ほら、見てください。彼女のどこが男性だっていうんですか。それに、シャワー中にうっかり足を滑らせて亡くなってしまったときも、裸を見られるのが恥ずかしかったって言ってたんです。……あ、いや、個人差もあるので、こればっかりは一概には言えませんけど。でも、そういうのってやっぱり女性のほうが恥ずかしいものじゃありません!?」  丁寧にハンカチにくるんで持ってきた例の写真を大慌てで通勤バッグから取り出すと、三佳はまだ到底信じられないといった思いで、早坂の鼻先にそれを突き付ける。
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