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確かに『出やがったわね』や、早坂の裸を見たときのリアクション、消える間際の『新しい自分に目覚めちゃいそう』なんていう言葉に引っかかるものがなかったと言えば嘘になる。
でも、写真のユウリは胸もあるし、体の線も細い。どこからどう見ても三佳の目には女性にしか映らないのだ。いきなり男だったと言われても、どうにも信じられない。
「これだから野々原さんは……。節穴もいいところですよ」
けれど早坂は、息巻く三佳をよそに心底残念そうな目をした。鼻先に突き付けられた写真を迷惑そうにピッと指で弾くと、「ああっ!」と非難の声を上げる三佳に構わず、
「あのですね。彼女――いや、ここはあえて〝彼〟と言いましょう。彼は、髪を伸ばしたりネイルをしたりしていたから、死体を見られるのが余計に恥ずかしかったんですよ。部屋の中のものもそうです。体は男性なのに、部屋にあるのは女性の服やメイク道具だなんて、他人から見たらこんなに不思議なことはありませんからね。不動産会社や警察が状況確認に部屋に入ったときも、そのとおりです。きっと拷問以外の何物でもなかったでしょう。そのためにご両親から勘当されていたとは考えられませんか?」
そう、駄々っ子に言い聞かせるように問うた。
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