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「そんな……」
三佳はそれきり、しばし言葉に詰まった。ただただ、やるせない思いが胸に渦巻く。
もし早坂の推察どおりなら、みんながみんな、つらい。息子の性を受け入れられなかった両親も、受け入れてもらえなかったユウリも、どこにも気持ちの行き場がない。
……だってもう、ユウリはどこにもいないのだから。
でも三佳も、どうして点検口なんだろうと不思議ではあった。ユウリの話では『置いておいた』ということだったけれど、まるで隠すようだとも。
確かに早坂の言うとおりで、好きなら堂々と飾ってもよかったのだ。
夜の商売ということで、多かれ少なかれ引け目はあったかもしれない。彼は大きな会社の社長ということだったから、念には念を入れて厳重に管理していたかもしれない。
けれど、誰に見せるわけでもないのにアルバムに残しておくわけでもなかったのだ、考えられることといったら、両親に捨てられないため――だったのかもしれない。
とはいえ、三佳にはもう、ユウリが何を思っていたかを知ることはできないけれど。
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