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一晩であれだけの体験をし、写真も預かったわけだが……それでも、と願うところは、まだまだ大いに持ち合わせている。それは俗に言う、現実逃避というやつだけれど。
第一、〝今はまだ〟と言った時点ですべて認めてしまっている。
「おやおや。それはまた面白いことを言いますね」
「うっ。いいじゃないですか、職場に希望を持ったって!」
「そんなことより、今から僕が言うところにお遣いに行ってきてもらえますか? 頑張って働くと、どうにも体が糖分を欲してならないんですよ、これが」
揚げ足を取る早坂は、三佳の遠吠えなど、どこ吹く風だ。
メモ紙にサラサラとペンを走らせると、先ほどピッと指で弾かれた写真を拾い上げたまま、日本語って難しい……! と頭を抱える三佳に「はい」と妖艶に微笑んで差し出す。
「……わかりましたよ。行ってきますよ」
「はい。二十個、お願いしますね」
「そんなに!? どんだけなんですか、もう……」
てか、一番頑張って働いたのは私だと思うんですが!
仕方なしに渋々受け取りながら、三佳は声高に思う。
それより何より、普段は頑張っていないような言い方はやめてほしい。語弊があるというか、誤解が生まれてしまうんじゃないだろうか。それに、なんだかどっと疲れる。
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