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「この中のフィギュアが・・さっき、しゃべっていたの?」
「・・みたいです」
するとおばさんは、「世の中、いつのまにか、進んでいたのねぇ」と言いながら、這うようにして箱に近づき、煙が噴き出ている箱の出窓を覗き込んだ。
そして、
「本当ね・・煙でよく見えないけど・・ちゃんと顔があるわ・・」
フィギュアの顔を先に見られてしまったぞ! 何かいやだ。
「でも、これって・・人間の女の子じゃないの・・」と言って、僕の方に向き直り、「やっぱり、誘拐・・監禁じゃないの?」と真剣そのもの、疑惑の顔で僕を睨んだ。
「でも・・この顔って・・」
おばさんはぽつりと言った。
「だから、精巧に、人間の女の子そっくりにできているんですよ」
そう僕が言うと、
「ソンナことより・・ハヤク、ココから出してください」
と、またフィギュアの声が聞こえた。
その声におばさんは「あら、かわいそう・・この中、狭いのね」と言った。「私の顔を見ているわ」
僕もたまらなくなって、箱に近づいて出窓を覗いた。
ああっ、またおばさんと近接距離だ。肩が、腕が触れ合う。年上のふくよかな女性の体がそこにある。
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