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「またお前か」
リーダーが手下をつかみ上げた化け物の右腕に斬りつけた。化け物の丸太のような右腕が一刀のもとに斬り落とされ、手下の身体とともに音を立てて地面に転がる。手下は絡みついた指を引きはがそうとやっきになっている。化け物はゆっくりと何事もなかったかのように、リーダーに顔を向けた。その一方で片足を上げると、無造作に手下の頭を踏み砕いた。
「くそ、覚えてやがれ」
ひとりきりになったリーダーは風のように駆け去って行く。戦闘偵察隊から何本もの矢が放たれたが、それを難なく交わすと草原の彼方に消えて行った。
後にはひくひくと痙攣する頭のない死体と、墓標のように額に短剣を突き立てた死体が残された。化け物は自分の右腕を拾い上げると、まるで継ごうとするかのように、右腕の切り口に押し当てては首をかしげている。
「危ないところだったな」
カイの肩に手が置かれた。そこには栗色の長髪を風にたなびかせて長身の男が立っていた。
「アーライル様」
カイは安堵と、言い知れぬ疲れに襲われて、意識を失った。
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