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気がつくと、カイは草原の上に敷かれた毛布の上に寝かされていた。意識を失っていたのは大した時間ではないらしい。横にはガラの姿もある。ガラはまだ目覚めていない。
「気がついたか」
アーライルがカイの顔をのぞき込んで言った。
「まだじっとしていろ、とにかく屋形とイサリオン殿には使いを走らせた」
カイはゆっくりと身体を起して辺りを見回した。酷く頭が痛む。アーライルのほかにも、戦闘偵察隊の面々も集まっている。そして、例の化け物もいた。カイは思わず身震いをしてにじり下がった。
「怯えることはない、この里で使役しているミュートだ」
黒髪を顔に垂らした痩せぎすの男がぼそりと言った。まるで死体のような青白い肌をしている。
「彼が、この戦闘偵察隊の班長『傀儡師』のラドルだ」
アーライルが言った。
「ミュートを見るのは初めてか」
ラドルはその場に座り込むと、生気の乏しい目でカイを見た。
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