2 ミュート

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 ミュート、カイも話にだけは聞いていた。先天的に肉体の欠損や過剰をもって生まれて来る者、忌むべき存在とされ、多くの場合産まれるとすぐに殺されてしまうという。都市の上流階級では、一族からそのような穢れた存在を出したということ自体が信用にかかわるとして、闇へと葬られるとも噂されていた。しかし、中には極めて特殊な能力を持つ者もあるらしい。ほかの種族においてはタブー視されるミュートだが、スメクランに限っては、そのような特殊能力を持つ者を手に入れて、道具として使役することもある。 というところまでは訓練所の座学で学んでいた。 「はい、初めてです」 「再生過剰のミュートだ。傷はすぐ治るし、今日斬り落とされた腕だって、そのうち生えてくる。俺たちは、厳しい戦闘が予想されるときに、あいつを盾として使うんだ。問題は下手に傷を受けると、そこから余計な器官が生えてきちまうことだがな。いつぞやは全身に切り傷を受けて、体中耳だらけになったこともある。ときどき刈ってやらなきゃならんのが面倒だ」  陰気な印象とは裏腹にラドルは早口でまくし立てた。頬に笑みを浮かべているが、その眼は笑っていない。ただ異様な光が湛えられている。カイは背筋が冷たくなるのを感じた。
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