2 ミュート

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「本来はまだ少し早いんだが、ミュートについて知っておくのもいいだろう。これから戦闘偵察隊の駐屯地に行ってみよう」  アーライルが言った。ほかにもミュートがいるのだろうか、それはどんな姿をしているのか、カイの心は得体の知れない不安に揺れた。 「うーん……」  ガラも目覚めつつあるようだ。カイは苦しそうに顔をゆがませたガラを見詰めた。頬が赤く腫れ、目の下に黒々とした内出血の痕がある。 「アーライル様……俺、あのとき何もできませんでした。ガラを危険な目に遭わせてしまって……申し訳ありません」  カイは、まったく背後の気配に気づかなかったこと、手も足も出ずに捕まったことを思い返して唇をかんだ。 ガラはそれでも脱出を試みようとした。それに比べて自分は……。 「逃げて行った男だがな、ドルグの里のログマールってヤツだ。かなりの手練れで、俺でも一対一ではやり合いたくない。手下も相当の腕だった、気にするな」  アーライルがカイの肩に優しく手を置いた。 「でも、でも……俺、強くなりたいです」  カイは唇を震わせながら吐き出すようにして言った。 『騙されたくないのなら、騙されずに済むように知恵をつけろ。誰かを犠牲にしたくないのなら、犠牲にせずに済むように強くなれ』  イサリオンの言葉がカイの頭に蘇った。しかし、今だけは……。カイは肩に置かれた手を握りしめて泣いた。
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