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目覚めたガラは、何があったのかまるで理解できずに途方に暮れていた。それでもアーライルが傍にいることを知ると事情を察して、安堵の涙を浮かべた。
「この跳ねっ返りが」
「ごめんなさい」
アーライルの言葉に、ガラは素直に謝った。珍しくしおらしい様子だったが、視界の隅に例のミュートを見つけると、とたんに震え上がった。
「な、何なの! あれ」
「お前が好奇心に駆られて見たがったものだ。……ついでに言えば、お前の命の恩人でもある」
ラドルがガラの顔も見ずに、面倒臭そうに呟いた。
「あれは、この里のミュートだ」
アーライルが言った。
「ミュート……」
ガラの表情が険しくなった。汚らわしいものを見る目になっている。
「それから、今回の件は親父にも報告済みだ。あとでたっぷり油を搾られるから、覚悟しておくんだな」
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