2 ミュート

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 一行は駐屯所へ向けて出発した。  戦闘偵察隊のメンバーはラドルのほかに三人、男が二人に女がひとりだ。出発したときには七人いたそうだが、三人は遠征先で命を落としたらしい。それについてラドルは詳しく語ろうとはしなかった。それだけ厳しい任務だったのだろう。カイは改めて、今まで自分が置かれていた境遇が、ぬるま湯に浸かったようなものだったことを思い知らされた。ちなみにミュートは頭数に入っていない。  ミュートは胴と手首を鎖につながれて、巨体を丸めるようにして、大人しくついて来ている。見た目は恐ろしいが、つい先ほど見たような殺戮をいとも容易く行うようには感じられなかった。実際目にしていなければ、とても信じられないだろう。  ミュートの戦いの間、気を失っていたガラは、それだけにミュートに興味津々だ。まるで珍しい動物を見物しているような気分なのだろう。周囲を回ってはジロジロと見たり、棒で小突いたりしている。ミュートは居心地悪そうに身じろぎするだけで、抵抗しようともしない。 「ガラ、やめろってば」   カイはずっと冷や冷やし通しだった。いつミュートが怒り狂ってガラに襲い掛からないとも限らない。アーライルやミュートを飼いならしているラドルがいるとはいえ、このミュートがひとたび本気になれば、止められるとは思えなかった。
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