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ラドル班の面々は駐屯地につくと黙々と装備を片付けて、五棟ある隊舎のひとつへと入っていった。カイとガラはアーライルに促されて、ラドルの後に続いた。ラドルは駐屯地の片隅にある、粗末な石造りの建物に向かった。
分厚い鉄の扉がついた小さな小屋だ。ラドルは隊舎から持ち出した鍵を厳重な錠前に差し込んだ。扉が軋みを上げて開く。ラドルが顎でミュートに中へ入るように指図した。ミュートは狭苦しく、明かりもない石造りの部屋へ閉じ込められるというのに従容とその指示に従った。
カイの目にちらりと見えた室内は剥き出しの石壁に、僅かばかりの藁が敷いてある床。お世辞にも過ごしやすいとは言えない環境だ。
「こいつらが逃げ出すことはないが、何しろ里の財産だからな」
ラドルが元のように鍵をかけながら言った。逃亡を防ぐためではなく、盗難の予防のための鍵なのか。カイは思わず顔をしかめた。
「カイ、ミュートはあくまでも物として扱われる。見た目は我々に似た形をしていても、道具に過ぎないんだ」
アーライルがカイの表情を見て言った。
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