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『ナイトビジョン』は怯えた様子で俯いた。そのしぐさはカイの罪悪感をチクリと刺激した。自分は彼らをまるで見世物でも見るように見物している。彼らはいまどんな気持ちでいるのか。
「この『ナイトビジョン』はどんな子なんですか」
カイはラドルに尋ねた。
「だから、かなり性能のいい暗視能力を持っていて……」
「いえ……性格とか」
ラドルの言葉を遮って、カイは訊き直した。
「性格? あまり考えたこともないが……こいつは小心なんだろうな。戦いになると縮こまってやがるから」
ラドルはカイの質問に虚を突かれたようだが、何かを思い浮かべるようにして答えた。過去に連れ出したときのことを思い返していたのだろう。
「あまりミュートに感情移入するべきではないと言われている。いざというときに使いこなせなくなるからな」
アーライルが平板な口調で言った。
「でも!」
我知らずカイはきつい言葉で反駁しようとしていた。しかし、アーライルの目にかすかな哀れみを見取って、口をつぐんだ。
「ふーん、こっちが『ナイトビジョン』なら、さっきの大男はなんて呼ばれてるの」
しげしげと『ナイトビジョン』を見詰めていたガラがラドルに訊いた。
「ああ、あいつは『不死身』だ。もっとも頭や心臓をやられれば死んじまうだろうがな」
ラドルが答えた。それで鉄兜に鉄の前掛けなのか。重く嵩張る装備であれだけの速さで動き回れること自体がすでに異常だ。
「実地検分はもう十分だろう」
ラドルはそう言うと『ナイトビジョン』の手を引いて石造りの小屋へと連れて行った。
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