2 ミュート

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 一行はラドルの案内で戦闘偵察隊の隊舎へと向かった。  隊舎の中は粗末な机と数脚の椅子、それに部屋の片隅二段ベッドが三つほど並んでいるだけだ。その隊舎にはカイのほかにガラ、アーライル、ラドルしかいない。 「ほかの四班は、解散していて留守だ。今夜はこの班長用の宿舎を使ってくれ」  カイたちが座って一息つくと、ラドルはティルの葉を煎じた飲み物を各自の前に置いた。薬草の柔らかい香りに人心地がついた。暖炉には火が焚かれ、その上に掛けられた鍋の中で湯が沸かされている。机の上には粗末なランプが吊り下げられて、部屋をほっとするような明るさで包んでいた。とっつきにくい外見とミュートに対する扱いには馴染めないが、ラドルの態度にカイは心を許しつつあった。 「さて、お前たち二人をここへ連れてきたのは、ミュート見物をさせるためだけじゃあない。実戦でミュートがどのような働きをするかを目にした折角の機会だ。まあ、ガラは気絶していたがな。ミュートについて少々勉強してもらう」 「……!」  何か言いたげに腰を浮かしたガラを制し、アーライルはティルを一口飲むと顔をしかめて言った。たしかにあまり美味いものではないが、カイはラドルの好意を無にすまいと無理をして苦く熱い液体を飲み下した。一方でガラは最初から手をつけようとせず、別の意味で顔をしかめている。おそらく気を失っていたことを指摘された上に、勉強という言葉を受けて拒絶反応を示しているのだろう。
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