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「私は二人からある程度距離を置いて監視していました。まさかログマールが入り込んでいるなんて思いもよりませんでしたからね」 「下らん闖入者だ」 「いや、かなり危なかったんですよ……。  それはさておき、二人が捕まる直前に森の中でほんの一瞬妙な気配を感じたような気がしたんです。位置的に里の見張りでもログマールでもない、勿論あの二人のものでもありません。もしや、何か心当たりがあるのではと」  その気配について、アーライルは心のどこかに小さな棘が刺さったかのように気になって仕方がなかった。数々のダンジョンを潜り抜け、戦いに明け暮れてきた中でも一度も感じたことのない気配。 「……いや、心当たりはない」  イサリオンの気が微かに揺らいだ。 「本当ですか」  イサリオンはこの件で自分にも隠していることがあるのだろうか。 「ああ」 「それならいいのですが。では」  そう言うとアーライルは踵を返して来た道を帰る。イサリオンを相手に腹の探り合いをしたところで詮無きことだと分かっているのだ。    闇に佇み、イサリオンは去っていくアーライルの後ろ姿を通して遥かを彼方を眺めた。 「是非もなし……」  その言葉は闇に消えた。
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