あいことば

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私、長峰 沙織 飯塚 皐月 山本 颯真 3人は幼稚園からの幼馴染。 家も近いのでずっと一番仲が良くて、この春には3人とも同じ高校に進学した。 「『たっちゃん』は起きたか?」 「し、知らない!!」 その時、皐月の家のドアが開いた。 「ふぁ……眠……おはよー、『とーま』」 「おう、遅刻すんぞー」 「ほんとだ。起こしてくれてありがと、『たお』」 ……その呼び方は、私達の合言葉のようなもの。 年少の時、3人ともさ行が上手く発音出来なくて、 さおり→たお さつき→たっちゃん そうま→とーま と呼び合っていた。 大きくなるにつれて、自然と呼び方が変わったけど…… 3人でいる時だけは、今でもたまーに昔の呼び方をする。 3人だけの秘密の合言葉みたいで、私は好きだった。 ……だって学校に行けば、私だけの『たっちゃん』と『とーま』じゃなくなっちゃうから。 「飯塚くん、おはよ!何食べてるの?」 「パン。寝坊したから」 「あはは、なんか可愛いー」 「颯真!今日部活忘れないでね!」 「おう、多分な。笑」 「もう!呼びに行くから!」 いつもながら……誰かしら女の子が側に来る二人。 彼女らからすると私の存在はまるで空気……まぁこんなのはもう慣れっこ。
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