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不満を口にするシュウ。此の時期に特例で一人入隊させるにあたり、手続きに研修やらと隊を仕切る己への面倒事は多い。勿論、リュウもシュウの心情は理解するが、適当に割り振るわけにもいかないのだ。
「だって、玄武は今年他より多目に兵を入れたばかりなんだぞ?」
と、言うこと。シュウも勿論、知ってはいるが。如何せん、仕事を増やしたくは無い。
「だからと言って、たった一人では無いですか……」
先程のユウキを意識し、少々拗ねた様に弟らしく振る舞ってみるのだが。
「シュウ、我が儘言わない。一人と言え、今一番兵が少ないのは白虎だからね。来年、退役する者も一番多いし……来年、我が軍に此れ程の実力ある者が多く志願するとも限らないだろう?」
無駄であった様だ。己でも既に理解している事を諭されてしまった。心で舌打ちをした後で一礼するシュウ。
「……承知しました」
「はい、よく出来ました」
シュウへ穏やかに微笑む国王。
「では、リキ。貴方は、本日より白虎隊配属。力量をもっと詳しく見極める為、シュウより試験を受けた後、階級も定めよう。階級によっては相応しい知識も必要でね、筆記試験もあるから……リキ?」
まだぼんやりして、瞳すら動かないリキへリュウは眉間へ皺を寄せた。リキは、我に変えると慌てて頭を下げた。
「し、失礼致しました!あまりに、驚いて……有り難う御座います!国王陛下!」
そんなリキへ微笑み、玉座より腰を上げたリュウは、付きの者を従え立ち去った。
国王の足跡すら消えた静かな謁見の間。徐ろに顔を上げたリキ、其の両側に並ぶシュウ、ユウキ。
「想定外だ……来るのではなかった」
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