気付かれぬ再会。

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「お前は少々演出が派手だったからな、特例でもあるし気に入らないと思う者もいるだろう。不振な出来事があれば私へ知らせる様に」 「あ、はい……」  気遣いに照れたように笑うリキへ、シュウは一瞬表情が強張った。続き、胸が激しく鳴り出す感覚。何故だろうか、己がよく知る笑顔を見た気がした。今此処にいるのは、全く知らない顔であるのに。本日は、予期せぬ出来事に少々疲れたのだろうと、軽く息を吐き落ち着きを取り戻したシュウ。 「……ではな」  シュウは背を向け、部屋の扉は静かに閉められた。  狭く、殺風景な部屋にはベッドと小さな机、数着しか服が入りそうに無い箪笥。己は、此の部屋をよく知っている。懐かしさに、笑みが零れた。 「白虎も……兵卒は此れか……」  寝心地の悪そうな狭いベッドを撫でると、其処へ徐ろに寝転んでみた。其の景色も、覚えている。天井をぼんやり見詰めるリキ。やがて、其の視界は霞み、潤んでいく。そして、頬を伝う涙。 「変わって、無い……」  リキは、シュウの微笑んだ顔を思い出す。其れも、よく知っているのだから。 「今でも……ずっと……」  呟く声。そう、嘗て己はあの人の側を許された。鋭く、厳格な瞳が己を見詰める時は、何時も此の上なく優しくて、狂おしい程の熱を帯びていた事を知っている。けれど。 「もう、無理だ……」  己の顔を撫でるリキ。そうだ、己は『リキ』。もう、嘗ての己ではなくなった。シュウが愛した者はいない。此処にいるのは、シュウの知らない者。そして、何より『己等』が目的とする事に巻き込めない。側にいるのに、手が届くのに、もう全てが変わってしまったのだ。優しい微笑みだけが、心に浮かんでは消える。 「シュウ様……」  リキは震える体を己で抱き締める様に踞った。静かな狭い部屋には、リキの嗚咽が暫く止まなかった。
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