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「あ、あの、此れ……」
「お前のものだ。早く着替えて出て来い」
背を向けたシュウは扉の無い部屋を出て行った。リキは隊服を見詰め、掌で撫でる。まさか、此の隊服に身を包むとは、と。暫くしてふと顔を上げると、同じ隊舎の隊員達が扉を無くした部屋の向こう側から怪訝に此方を伺う姿。そうだろう、今ので目覚めない者に国軍兵等勤まるだろうかと言う事だ。気まずくはあるが、取り敢えず。
「お騒がせして申し訳ありません……リキと言います……ど、どうぞ宜しく」
その後、真白の美しい隊服に身を包んだリキ。対峙するのは、同じく美しい白の隊服に身を包み、乱れなく整列する隊員達だ。そして、リキの隣にはシュウが。
「本日より、彼も我等白虎の隊員となった。大体の者が知っているだろうが、其の実力はユウキと並ぶ程だ」
シュウの其の言葉に、一瞬隊員達が息をのみざわついた。此の中には、昨日の経緯を目撃した者も多いのだ。
「静かに!……で、あるからして、国王陛下より入隊試験にて相応しい階級を与えよとのこと。幼く、頼りなくも見えるだろうが……」
シュウが語る言葉に、リキが眉間へと皺を寄せた。余計な言葉である、と。
「四神隊では、実力が一等重きを置かれる。彼に従うのが気に入らなければ、己が腕を磨き上に立て。リキ、皆へ挨拶を」
其の言葉に、リキがシュウの隣より一歩前に出た。そして、深く頭を下げる姿。
「昨日、今朝と、騒がしく申し訳ありません。サラサより、義父への孝行がしたくて入隊を希望しました……どうか、宜しくお願い致します」
言葉の最後迄、下げた頭を上げなかったリキ。其の人柄への印象は、まずまずのようであった。
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