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「解散だ。其々、持ち場へ戻れ」
其の言葉に今一度身を正し、一斉にシュウへと敬礼すると、隊員達は其々の持ち場へ散って行った。リキは此れより、シュウによる入隊試験があるのだ。
隊員達の動きを見届けたシュウは、隣のリキへと身を向ける。
「付いてこい。試験を行う」
「は、はい……!」
リキは、シュウの背を追う様に付いて行く。昨日も見詰めた、広い背。白い隊服に身を包んだ此の背は、今己の胸を苦しい程締め付ける。堪らず、俯くリキ。
只足を進め、辿り着いたのは白虎隊員の訓練場。此処では隊員達が日々、剣、槍、弓、様々な能力を磨く訓練を行っている。一人がシュウとリキの姿に手を止めると、他の者も其の動向を伺い出した。やはり、リキの試験結果が気になるのだろう。中央に設けられた闘技場へ促されたリキは、其の上へ上がった。広々とした空間にて、対峙するシュウ。
「お前の一番の得物は何だ」
「剣です」
リキの答えに、側にいた隊員へ目配せたシュウ。察した其の隊員は、何処かへ駆けていくと直ちに剣を二人分携え戻って来た。其れを、厳かにシュウへと手渡す。そして、シュウは其の片方の剣をリキへと差し出した。
「殺す気で掛かってこい」
シュウの言葉に、戸惑いを見せるリキ。シュウが僅かに笑った。
「ほう?私を殺してしまえると思っているのか、其の顔は」
「い、いいえっ!」
「傲りは、一番の大敵だぞ」
そう言い、静かに剣を構えるシュウ。其の表情も引き締まる。鋭く、光る瞳。
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