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「来い」
其の一言が耳へ届いた瞬間、リキの体が動いた。次に響く金属音。リキの剣を弾くシュウ。此の時、昨日のユウキと同じくシュウも驚いていた。弾いたリキの斬撃、其の力強さに。しかも、表情に変化は無い。全力で掛かって来た訳でもない様だ。此れは、試験のレベルを上げる必要がある。力を込め、シュウが斬り込む。が、無駄の無い動きで防戦するリキ。休みなく、激しい金属音が響く訓練場。周囲の者は最早、惹き付けられるように其の激しい斬撃の攻防を見詰めていた。
リキの息が漸く上がってきた事に気が付くシュウ。しかし、依然斬撃の力強さは健在だ。シュウは手を休めず、隙を待つ。徐々に、リキが防戦へ。其処で、僅かに力が弱まったのをシュウは逃さなかった。次の瞬間、リキが持つ剣が空を舞った。突如止む金属音。そして、場外へ落ちた剣。
上がった息に肩を揺らすリキ。体中が熱く、額、頬は汗が伝い流れ落ちる。そして、静かに跪いた。
「参り、ました……」
シュウも僅かに呼吸に乱れがあり、肩をも揺らしている。額に滲み、頬を伝う汗。駆け寄った隊員がシュウの剣を受け取る。
「結構……陛下へ、御報告申し上げておく。本日の試験は此れ迄。夜、私の部屋へ来る様に。結果は其の時に伝えよう」
「は、はい……!有り難う、御座いました……!」
頭を下げるリキ。まだ呼吸は荒い。僅かに上げた頭、リキは背を向けたシュウを見詰める。正直、勝算があると挑んだが、まだ己は彼に届かない様だ。対等ですらない、悔しさが込み上げ、拳を握り締めた。其処へ、剣を持ってきてくれた隊員が歩み寄って来た。掛かる影に、徐ろに顔を上げると。
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