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とある世界に存在する大陸。其処に在る数多の国の中でも、最も広大な大地を有する大国。シンラと名付けられた其の国は、豊富な水、豊かな自然に恵まれた美しい国。今現在の王は若く、優しく穏やかな瞳が特徴の美しい青年。実は彼は第二王子。戦による皇太子の急逝により、第二王子であった弟が玉座を父王より賜った。此の国には、前王の其々の妻より生れた腹違いの王子が四人いた。中でも、戦で命を落とした第一王子は早世した正妃の子であり、優秀であった。精悍な容姿。才覚、統率力、何より人を惹き付ける魅力を持っていた。父王の期待と寵愛は大きく、弟達にとっても敬愛すべき兄。
此の国の軍隊は防衛隊と、武に特化した四つの部隊が存在する。其々を朱雀、青龍、白虎、玄武と呼称し、父王は我が子達に其々を管轄させていた。第一王子は朱雀を、第二王子は青龍、第三王子は白虎、末の王子は玄武を、と。
悲劇となった戦とは、同盟国への介入戦争であった。勝算も高く、何時もと変わらず凱旋の帰宅を待っていた父王。老いた彼は生前退位を皇太子へ告げ、近く即位式を行う心積りであったのだ。
だが、想像していた現実は訪れなかった。連絡を絶った朱雀隊を案じた父王が偵察を使わせた。そこで、偵察隊が見たのは目を疑う様な光景であった。戦場は焼きつくされ、凄まじい油の臭いと、死体が焼けた臭いが消えずに残っていた。敵も味方も、顔の判別も不可能。辛うじて、朱雀隊の持つ剣の紋章が確認出来た程度。正に全滅。敵国による狂気の防戦であったと決定付けられた。しかし、幾らか不可思議な点も見受けられ、もっと密な調査をとの声もあったが、父王は溺愛していた皇太子の戦死に、最早肉体も精神も耐えらなかった。せめて、と調査隊が持ち帰った幾つかの遺品を前にして父王は其の場で倒れてしまった。懐妊していた皇太子妃も、愛する夫の突然の死に心痛は察するにあまりあり、遂に腹の子は天へと還ってしまった。最早父王も政治等行える状態でもなくなり、皇太子を追うようにふた月程で息を引き取ったのだ。第二王子の即位後、戦死者達の弔いが一度行われたきり、此の案件は国の忌まわしき悲劇として、表に出す事を禁じた。感情を無視し考えるならば、国にとっては介入戦争で国軍の一部隊を全滅に追い込まれたのだ。不名誉、ともなりうる。皇太子を慕う者からは抗議が出たが、新王は只宥め、聞き入れる事は無かった。
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