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「済まない……どうした、何かあったのか?」
「い、いえっ、何でも……」
言いつつ、リキは顔を隠す様に隊帽の鍔を下へ向ける。ユウキは心配そうに見ていたが、ふとリキが手に持つ一冊の本に目を止めた。
「其れは、兄上の……?」
ユウキの声に、リキは少し顔を上げた。
「あ、はい。試験結果が散々で……此方で学んで、又頑張れと……」
苦笑いを浮かべ、ユウキへ本を見せるリキ。ユウキはリキの現状を試験結果と受け取った。
「試験か……そう言えば、父親へ金を送りたいと言っていたな……駄目だったんだな」
そう言って、気の毒そうに息を吐く。変に気不味い空気になってしまい、リキは無理をしながらも笑って見せた。
「あ、あの、ですが、大丈夫です!シュウ様も次があると……!」
「まぁ、そうだな……」
ユウキが笑って頷くと、リキも会釈で答えた。
「はい。では、失礼致します」
「あ、待て!」
敬礼の後、立ち去ろうとするリキを思わず呼び止めたユウキ。リキが振り返ると、ユウキは少々戸惑っていた。何故呼び止めたのだろう。顔が熱い。
「其の……直属ではないが、お前とは妙な縁があったしな……相談事位なら乗ってやれる、又うちにも顔を出すと良い」
照れた様に視線を外しているユウキの言葉へ、リキは笑顔を見せる。
「はい!有り難う御座います!」
再び敬礼して立ち去るリキの後ろ姿に何故か暫く目が離せず眺めていたユウキ。妙な胸の疼きには、気が付かない振りをして。
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