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真夏なのに、ここはやけに涼しい。今夜も明々としている。明るくても暗くてもどちらでもいい、コースは熟知している。いや、熟知というのは違うな。ただの、一直線のコースなのだから…
それなのに、もうすでにいくつもの命が亡くなっているコースだ。
全く縁の無いもの…
親戚…
親…
兄弟姉妹…
恋人…
みんな このコースに挑み、そして命を散らしていった…
「なぜやるの!! あなたがやる必要なんか無いじゃないっ!!」
かつての恋人の妹が言った。その言葉の中にある想いも俺には気づいていた、だがその言葉は俺には届かない、なぜやるか? そんなのは分かってくれなくていい、なぜならオレ自身も分からないのだから……
スタートの定位置に着いた。別に決まっている訳じゃない、ただ皆この辺りから始めるので、なんとなくスタート地点になっただけだ。眼前に広がる平面、障害物は何もない。
ただ ただ 走り抜ければいい、それだけだ。
皆も同じ条件だった、それなのに 皆 命を落とした。
息を調える、体調は万全だ、全身がヒクヒクする、身体のツヤもいい。
助走しては止まる。それを数回繰り返す、問題ない。
よし! 一気に行くぞ!! 全力でダッシュした、異状ない、少し警戒して止まったが、危険は感じられない、ふたたびダッシュ、よし、いける!!
そう確信した時、急にまわりが真っ暗になった。
バシッ!!
「まーた出やがったか。なんで毎晩毎晩、俺の横を通ろうとするんだ、ゴキブリどもめ!!」
叩いた新聞紙で包まれて、俺も他の奴らと同じコースに行った。
ゴミ箱というゴールへ。
ーー 了 ーー
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