消えない絆

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「私が居なくなっても、私を探さないでね。美久に優しくしてね」  僕は、このセリフの意味を理解する事が出来なかった。  これから起こる悲劇を考えていなかった。  お盆の真っただ中の8月16日。僕たちは、喫茶店を出て、この街唯一の地下道を通って映画館に向かっていた。  この日地下道を歩いたのには、理由が合った。地上が太陽の日差しで暑かった事もあるが、地上でお披露目するビルの取材が行われていて、通りがふさがれていて、歩きにくかった。  しかし、この選択を僕は後々まで後悔する事になる。  9時31分。事故が発生した時間だ。  完成を控えたビルの地下部分で、ガス漏れから引き起こされたガス爆発が発生した。  僕達は、このビルの前を通り抜けて、50m 位の所を歩いていた。後ろから、鼓膜を突き破る爆音と一緒に瓦礫が飛んで来た。  爆音や瓦礫の後に襲ってきたのは、猛烈な炎の乱舞だった。  僕は、壁際に吹き飛ばされて強く胸を打った。息が止まる思いがした。  しかし、これは序章でしか無かった。その後の炎の乱舞で、僕は身体の左半分を業火にさらすことになる。     
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