6人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
そして、そこには沈黙だけが残った。医者も看護師も次の患者を迎え入れる為に準備を始めていた、二人は一枚の戸を隔てた待合室の椅子に座っている。ナイフを握りしめていた腕は鈍く重くなっている。それ以上に二人の間には重く苦しい空気が流れている。
「奥、そのナイフ....捨てなかったのか?」
「捨てたよ、公園で捨てたのをお前も見ているだろう?」
「あぁ見ていたよ」
二人は一変に入ってきた情報で混乱している。
「足跡って言っていたよな?」
「あぁ言っていたな」
「”水を巻いて”消したよな」
「あぁ」
「埃の上に付いた足跡だから、水で流せば全部消えるって言っていたよな?」
「あぁ確かに消えていたし、それ以外の痕跡も全部消したし、ここ一年何もなかったよな?」
「・・・・」「・・・・」
「・・・あれは事故だ!」
「奥村。奥村。解っている、解っている。だから何も言うな」
「ナイフも石も全部捨てたんだから...それに、石は煮沸して...血を洗い流したはずだし...解らないようにもした!」
きぃ~ドアが開く音がした。そこには先ほどの刑事が二人立っていた。
「おかしいなぁ。何度出口に向かっても、ドアを開けるとまたここの扉の前に戻ってきてしまうんですよね。まぁそのおかげで面白いお話を聞けました。もう少し詳しくお聞きしたいので、署までご同行いただけないでしょうか?」
「・・・・」「・・・・」
二人はうなずくしか無かった。
一週間後、二人の元に凶報が届いた。
最初のコメントを投稿しよう!