感じた重さ

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 そして、そこには沈黙だけが残った。医者も看護師も次の患者を迎え入れる為に準備を始めていた、二人は一枚の戸を隔てた待合室の椅子に座っている。ナイフを握りしめていた腕は鈍く重くなっている。それ以上に二人の間には重く苦しい空気が流れている。 「奥、そのナイフ....捨てなかったのか?」 「捨てたよ、公園で捨てたのをお前も見ているだろう?」 「あぁ見ていたよ」  二人は一変に入ってきた情報で混乱している。 「足跡って言っていたよな?」 「あぁ言っていたな」 「”水を巻いて”消したよな」 「あぁ」 「埃の上に付いた足跡だから、水で流せば全部消えるって言っていたよな?」 「あぁ確かに消えていたし、それ以外の痕跡も全部消したし、ここ一年何もなかったよな?」 「・・・・」「・・・・」 「・・・あれは事故だ!」 「奥村。奥村。解っている、解っている。だから何も言うな」 「ナイフも石も全部捨てたんだから...それに、石は煮沸して...血を洗い流したはずだし...解らないようにもした!」  きぃ~ドアが開く音がした。そこには先ほどの刑事が二人立っていた。 「おかしいなぁ。何度出口に向かっても、ドアを開けるとまたここの扉の前に戻ってきてしまうんですよね。まぁそのおかげで面白いお話を聞けました。もう少し詳しくお聞きしたいので、署までご同行いただけないでしょうか?」 「・・・・」「・・・・」  二人はうなずくしか無かった。  一週間後、二人の元に凶報が届いた。     
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