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「おい。本当にいるのか」
「要請が来たのですから、何かがいるのは確かでしょう」
二人の男は、住民に気を遣うように小声で英語を使い何やら話していた。何かを探るように男たちはしばらく彷徨いていたがふと、立ち止まる。
「だめだな」
「ええ。これだけ負の気が充満していては、見当もつきません」
丁寧に答えた男は垂れた目で住宅街を見回し、彼らだけに解る、重々しい空気に顔を歪ませる。
年の頃は二十歳を過ぎたばかりかもしれない。
目尻は垂れているけれど、整った精悍な面持ちには、どこかしら過去の経験が織りなす重みが感じられる。
翠の瞳にクセのない肩までの金の髪、まとっている雰囲気にはどこか気品が漂っていた。
「ひとまず、ホテルに戻ろう」
隣にいた男はそういうと、メッセンジャーバッグを背中に回す。
三十歳近い、あるいは過ぎたあたりだろうか。左頬にある傷跡に似つかわしく、吊り上がった青い目と日に焼けた肌、栗色の髪は短くそれなりの戦場をくぐり抜けてきたようなきつい印象を持つ。
「そうですね」
青年はそう返し、口の開いたショルダーバッグのファスナーを閉じて持ち直した。
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