1人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
「彼はそれを聞いてなんと?」
「あ? 特には何も──そりゃあ、口元が緩んではいたがよ」
家族を殺した奴が死ねば、ちょっとは喜ぶだろうし。
耳を傾けつつ箱の中身を探っていたラクベスの手が止まる。眉間に深いしわを刻み、手にしたものをゆっくりと持ち上げた。
ジップ付きの袋に入れられた血まみれの淡い水色のシャツは、吉佐が死んだときの状況をまざまざと見せつけていた。
しかし、ラクベスが眉を寄せたのはシャツに記された凄惨な跡ではなく、二人にしか見えない、どす黒い意識の残りカスだ。
「これに長いあいだ触れましたか」
「鑑識なら触ってたかもな」
なんでそんなことを聞くのかと夢木は顔をしかめる。
最初のコメントを投稿しよう!