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「何でこんなことになったのかって魁人さん、あなたは先ほど現世で事故によって亡くなったのです。覚えていますか?」
事故死。
覚えているとも。
今も網膜には俺を轢いたであろうトラックの車体が目に浮かぶ。
「ここは死者の国、冥界。この地に辿り着いた者は成仏し生まれ変わるために輪廻の門を目指す。ですがそのほとんどの方は門まで到着できずに永遠の地獄をさ迷うこととなります」
「永遠どころかこんな気味の悪い場所は一瞬だろうが御免だよ」
蠢く亡者、血を流し手足をばたつかせている餓鬼のような者、そして何だかよくわからない肉塊の前に立つ二メートル以上ある角の生えた強靭な鬼。
地獄を体現したようなこんな場所にいたら命がいくつあっても足りない。まあ既に一つしかない命は尽き果てたのだけれど。
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