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「放っておけば魁人さんがあの肉塊になるのは時間の問題なのですが、安心してください」
「どうやって安心しろと?」
「忘れたのですか?」
そう告げると、死神の格好をした少女はゆっくりと言葉を続けた。
「私は株式会社にこにこ死神保険の外交員兼冥界案内人の地獄谷ヒルコです。地獄を徘徊する無保険者の亡者どもが私のことを死神と崇め案内を乞う程プロフェッショナルな死神なのですよ」
にこりと向けてくる彼女の笑顔が、俺の心の緊張を紐解いていく。
「魁人さんは生前契約した死神保険によって私が責任もって輪廻の門までお送りしますので心置きなく成仏してください」
騙されたのかとも思ったけど、こういう時に入っていて良かったと思ってしまう。
保険なんてそんなものだ。
けれど、どうしてこんな状況になってしまったんだろう。
そうだ、確か今日は俺の誕生日だったはず。
結果的に、もう二度と迎えることができない最後の誕生日になってしまった。
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