第一章 『あの世の沙汰も死神しだい』

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「はい、それではこれでお手続きは全て完了となります」  カチリと鳴ったボールペンが仕事の終わりを告げ、そのままやけに膨らんでいる胸元のポケットへと吸い込まれていく。 「今日は大安だし契約には持ってこいの日ね。それに貴女のお名前、希望さんっていうの?」 「はい。この保険がお客様の希望にもなれるよう、せいいっぱいご助力させていただきます」 「縁起が良いわね。また新しい保険が出たら教えてちょうだい」  と、お姉さんと母親が保険トークをした後、最後まで笑顔を忘れなかったお姉さんは我が家から去って行った。 「母さん、これってもしかして……」 「魁人に新しい保険を入れてあげたの。嬉しいでしょ?」 「嬉しくないよ! これで何個めの保険だよ!!」
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