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今までに何社もの保険会社の契約書にサインさせられてきた。
保険料は全て親が払っているとはいえ、さすがに入りすぎだと思う。多額の保険料は家計にも響くだろう。
「魁人に何かあった後じゃ遅いのよ。それに亡くなったお祖父ちゃんの土地を整理したら三億円ぐらい残ったから、これからもたくさん保険に入れてあげるわよ」
母さんの保険好きは今に始まったことじゃないが、特に俺と父さんが加入させられた保険の数はかなりのものだと思う。
もし俺と父さんが死んだら、いったい母さんにいくらの保険金が入るのだろう。
家族内での保険金殺人が心配になるが、とりあえず今日は俺の誕生日。
疑いを向けるのはプレゼントを貰ってからでも遅くないだろう。
「それで、今日は誕生日じゃん。ちょっと欲しい物があるんだけど……」
「なに言ってるのかしらねこの子は。今の保険があなたへのプレゼントじゃない」
「え……? 保険が誕生日プレゼント!?」
信じられない。
「そんなこと聞いたことないぞ!」
「良いじゃない、魁人の将来のために貯蓄型の保険にしたから、いずれ満期になったらお金が受け取れるのよ。それに事故に会ってからじゃ遅いんだもの。いつか保険に入っていて良かったと思う日が来るわ」
「いやいや、ちょっと待ってくれよ!」
「じゃあ買い物に行ってくるわね」と言い残し、母さんはご機嫌そうにスキップをしながら玄関を出ていく。
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