第1章

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 マミちゃんは身長が高く切れ長のきれいな目をしている。そんな凛とした外見とは裏腹に、性格は人見知りで恥ずかしがりやでとっても控えめだ。すらりと長い手足はどんなスポーツでもこなせそうなのに、運動音痴でボールを投げると必ず明後日の方向に飛んでいく。趣味はお菓子作りで、マミちゃんのクッキーは絶品だ。  私はそんなマミちゃんがかわいいと思うのだが、本人はそう思っていない。変なイメージを抱かれることがあるからだ。中学のときはストーカーっぽい他校生がいたことがあったし、高校に入ってすぐのときも身長が高いというだけで無理やりバスケ部に入れられそうになったことがあった。私も助け舟を出したかったのだが、小柄で地味な新入生がリア充集団に太刀打ちできるはずもなく、ただおろおろすることしかできなかった。  小林先輩が通りかかったのはそんな時だった。すぐに状況を悟った先輩は、自分が所属する剣道部に勧誘するという名目でマミちゃんを助け出してくれたのだ。  毅然とした態度とマミちゃんの手を引く颯爽とした姿に、すぐ近くで見ていた私は恋に落ちかけた。ここで私が踏みとどまることができたのは、ちょっと引くくらいマミちゃんが激しく恋に落ちたことがわかったからだ。耳まで真っ赤で、恥ずかしそうで、でも先輩から目が離せない。離したくない。そんな気持ちがひしひしと伝わってきた。それを見て私の気持ちは別の方向に動いた。大好きなマミちゃんに幸せになってほしい、と思ったのだ。その時から私はマミちゃんの恋を応援する役に徹することにした。  翌日から、マミちゃんは剣道部のマネージャーになった。私がやや強引に勧めたからだ。本当は私たちは一緒に手芸部に入る予定にしていたのだが、手芸は家でもできる!小林先輩には学校でしか会えない!学年が違うから、接点をつくるには部活を利用するしかない!と説得したのだ。我ながらいい仕事をしたと思う。
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