第1章

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 とはいっても、おとなしいマミちゃんが剣道部になじめるかどうか私はとても心配していた。しかし、それが無用だったとわかるまでに時間はそうかからなかった。幸運にも先輩マネージャーが面倒見がいい人で、すぐに楽しそうに剣道場に通うようになった。優しくて気配りができて手先も器用なマミちゃんはマネージャーに向いていたようだ。上級生や他のクラスにも部活を通じて知り合いができ、入学当初はいつもびくびくしていたマミちゃんも次第に笑顔を見せることが多くなった。そんなマミちゃんを見るたび、私もつられて笑顔になるのだ。  マミちゃんは部活での出来事をいつも話してくれる。もちろん、そのうちの八割は小林先輩に関してのことだ。タオルの柄がどんなだったとか、部活の合間に部員とじゃれていたとか、こんなテレビ番組の話をしていたとか、頬を染めながら教えてくれるのだ。おかげで、私まで小林先輩のことについてとても詳しくなってしまった。  あの日恋に落ちたマミちゃんは、今もずっと落下を続けている。部活を通して先輩のことを知るにつれ、落下速度は留まるところを知らずぐんぐん上がっている。それも無理はないと思う。だってマミちゃんの話を通して聞く先輩は、本当にいい人なのだから。  重いものはさり気なく持ってくれるのはもちろん、剣道初心者の新入部員をフォローしたり、テスト前には勉強をみてくれたりと、とても理想的な頼れる先輩だ。
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