第1章

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 実際、小林先輩の評判はなかなかのものだ。手芸部の先輩にリサーチしたところによると、成績も常に上位をキープしているし、剣道部でも主将を務めるくらい優秀なのに、それに驕るようなことはなく、だれにでも分け隔てなく接する。背も高く顔立ちも整っているから、女子生徒からの人気も高い。マミちゃんに絡んでいたバスケ部の連中とは方向性は違うが、小林先輩も間違いなくリア充だ。  それなのに、だ。小林先輩には今まで浮いた話がないのだそうだ。とても年上の彼女がいるとか、だれかにずっと片思いをしているとか、噂はいくつもあるそうだが、どれも憶測の域を出ない。  なので、私は私なりの仮説をたてた。小林先輩は、心から大切にできるような相手が現れるのを待っている。だれとも付き合わないのは、まだその人に出会えていないからだ、と。小林先輩がそこまでロマンチストかどうかはわからないが、これならマミちゃんにもチャンスがあると思うからだ。小林先輩が彼女をつくらない理由は本人にしかわからない。だったら自分に都合がいいようたてた仮説を信じたっていいではないか。
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