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降り出した雨は一向に止む気配がない。 家に帰って携帯をいじりながらゴロゴロしていたら彼女からライン通知が来た。 開いて見ると 『傘も鍵も電池も無い』とボヤいたメッセージ。 大丈夫なのかと返信を送っても既読がつかない。 あのまま電池が切れたのかもしれない。 とりあえず傘を持って急いで家を出る。何度が家まで送った記憶を頼りに彼女の家へ急ぐ。 確かこの辺りだったよなと周りを見回していると家の前で濡れてしょぼくれた姿が目に入った。 彼女もおれに気づいたようで嬉しそうに小さく手を振る。 「貴久!」 ちぎれんばかりに振る尻尾が見えそうだ。 「大丈夫か?とりあえず家に行こう。」 「うん、ありがとう。助かったー!」 「あ、でも急いで出てきたから一本しか傘持ってきてないわ。ま、いっか、」 「え、あ、うん。」 普段とそう変わらないのになんかシチュエーションに照れるな、なんて思っていたのに、なかなかの雨に2人で縮こまって無言で競歩並みの早さで家まで歩く。 家に着く頃には2人ともかなり濡れてしまっていた。
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