1章 看る力

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1章 看る力

 青い空。白い雲。電線、に止まる鳥。  その小さな体から、羽根が一枚ひらひらと宙に舞った。  ぼんやりとその様子を眺めていると、突如としてその羽根の奥、持ち主であった鳥の横に数字が見えた。  ――5 「はぁ・・・」  思わずため息がこぼれる。  仕方のないことだ。  知りたくもないことを知ってしまう、「看て」しまうのだから。  ――0  五から順に減っていた数字が零になったその瞬間、電線の辺りが発光するのが見えた。  ふわふわと羽根が目の前に落ちてくる。  それも大量に。  羽毛布団を破った時のように。  その中に紛れてぼとっ、と何かが落下してきた。  焦げた何か。  香ばしい臭い。  電線に止まっていた鳥が、感電して焼け焦げた死骸だ。    ある日僕は、突如として力を手に入れた。  「看る」力。  それは、視認した生物の寿命を数値化して僕だけが認知するという能力。  誰も欲してなどいないであろう能力。  僕も必要としていなかった能力。  こんな力は、いらない。
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