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屡鬼阿が特安に拒否を示して1週間。
里京は思いつめた表情をしながら強硬手段に出る支度をしていた。
「変な色の雲っすねー。里京さん、今日は朝からずっと外が霞がかっているの、知ってました?僕ね、昨日MV撮影で一晩中外にいたんですよ。ずーっとこんな模様なんです。」
お屋敷のような特安本部で里京は資料から純鋭へと顔を向けた。
「桃色の雲と霞か。不気味だな…何も今日こんな日じゃなくてもいいのにな。」
純鋭は張り詰める空気を誤魔化すように表情を作った。
「やだなぁ里京さん。僕には彼女を執拗に追いかけるオジサンの方が不気味に感じますよ。」
里京はかすかに頭部に血管を浮かべ純鋭を睨んだ。
「こういう日はあまり好きじゃないんだ。」
「…満月の夜と霧の出る日は犯罪率も上がりますからね。」
「そうだな…。あの日もそうだったな。」
「あの日?…」
「嫌なんでもない。ところでお前のそれはなんだ?」
里京は純鋭の後ろに置いてあったゴルフバックを指差した。
「これは趣味です。」
「ゴルフはやらないのにか?」
「えぇ趣味です。さぁ里京さん気を付けて彼女を迎えに行ってください。」
純鋭はニコニコと目を細めて笑った。
「…純鋭お前も来るんじゃ?」
「かーんべーんしてくださいよ。さっきも言った通り僕は徹夜で仕事をしてきたんですよ?このまま同行したら過労死まっしぐらです。」
「そうだな。」
里京は少し残念そうな表情をしながらドアノブに手をかけた。
「あ、里京さん。霧が出る日は鬼が出るって古くから言い伝えがあるくらいなので、十分に気を付けてください。」
純鋭は笑顔を崩さず里京に言い放った。
里京は深いため息をつくと、そのまま部屋を出て行った。
「さて、どうしようかな。」
純鋭は里京の部屋から遠ざかる足音を確認すると表情をリセットし、ゴルフバックに手をかけた。
「やっぱこれでしょ♪」
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