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夢
あぁ、またかと思う。
真っ暗というよりは真っ黒な世界に視界を遮る濃霧が満ち満ちている。
視界は不自由に縛られ数メートル先を見るのがやっと状態、それでも、その濃霧が遮るその先の空間に懐かしい奴らがいるのが分かった。
何度も何度も見てきた『夢』ではあるものの、毎回込み上げてくる感情が溢れ出そうになるのを無理矢理抑えつけるのは骨が折れる。
切り替えろ。
これは『夢』だ。本物じゃない、俺を惑わせる別の何かだ。
深く吸った息を一息に吐き出して濃霧に浮かんだ人影との距離を詰め、拳を叩き込む。
霧散する人影には目もくれず次々に現れる人影の姿が見える前にその影を殴りつける。
これは作業だ。無感情に、無慈悲に、無作為に目に入ってくる影を霧散させていく。
目が醒めるその瞬間まで続く延々とした作業はゆっくりと終わりに近づいていき、気がつけば霧の壁に浮かぶ人影の数は最後の一つになっていた。
最親であり最後の客、濃霧の向こうでもわかる長髪が空気に流れている。
一歩こちらに歩を進める。
しかし、それを俺は許さない。
お前は違う、違うのだと勢いよく踏み込んで全力全霊の拳を人影に叩きつける。
突き抜けた拳は付近の霧を弾き飛ばして最後の客を濃霧の向こうの真っ黒な世界に葬り去った。
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